2010.03.25 Thu
【私的音楽評】NO.40 ニシセレクト13 担当ニシトオル

ユルさを演じるには才能がいる

卒業と入学シーズンですね。
ミレニアム2000年の今頃、とある中学校の卒業文集を読んだことがあった。
21世紀に卒業文集があることが新鮮で俺はページをめくった。
文集のテーマは“私の将来”。目次には“尊敬する大人”の一覧があった。
やはり目立ったのが両親そして先生。
その他はスポーツ選手、ミュージシャン、女優、漫画家、作家、政治家、実業家など様々。たとえばカルロスゴーンさんや村上春樹さんの名前もあったと思う。
そんな中で異彩を放つ活字に目がとまった。
ピエール瀧
明らかに違う。まるでケーキ屋のショーウィンドーに焼き豆腐があるようだった。
目黒健太君(仮名)、君は何を考えているのだ。
彼の作文“私の将来”はこんな内容だった。
『僕は電気グルーブのように人を踊らせ笑わせ驚かせるバンドを作りプロになります。そして僕のキャラはピエール瀧のようにユルくて楽な大人です。そのキャラで将来はタモリ倶楽部のレギュラーになります。だからこれから勉強以外の勉強をたくさんしなければなりません』
うーむ、健太君、キミの目標は中央官僚に成るより難易度は高いぞ。
でも中学生は生意気でイイ。俺は妙に納得してしまったのだ。
あれから10年が過ぎ、彼は今25才になっている。たくさん勉強をしてユルくて楽な大人に成れただろうか。
さて、電気グルーブは1990年頃にデビューしたサブカルの香りを残すテクノポップグループだ。
現メンバーは石野卓球さんとピエール瀧さんのふたり。
名前からして卓球とかピエールとか相当世間をなめているし、言動も下ネタありお笑いネタもありなのだが、実は社会の出来事をちゃんと見つめている知能犯だ。
一生懸命なのだがそれを絶対に表に出さない、そんな21世紀の若者の断面を表している。
だからもし25才の健太君が斜に構えて現れても、俺は“演じている彼”を理解できるような気がするのだ。
さてさて、長い前置きだったけど電気グルーブの曲を紹介。
B.B.E.(セルフトリビュートアルバムThe Last Supper/2001年)

ピエール瀧の言葉の弾丸が圧巻。大人なんてたいしたコトない、そんな真実を叫ぶ過激な迷曲。
覚悟して聴けよ↓
http://www.youtube.com/watch?v=DNSARyC7uqc&feature
虹(ドラゴン/1994年)

歌詞にある「トリコじかけになる」は“虜仕掛け”だと思う。石野卓球のボーカルはつたないけれどそれも味わいのひとつ。まるでジョンレノンのような奥行きと透明感のある名曲。
泣かずに聴けよ↓
http://www.youtube.com/watch?v=RHxjCle8ofg&feature
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| 週刊木曜日私的音楽評 | 12:54 | comments(-) | trackbacks:0 | TOP↑