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市民による市民のための音楽活動支援団体「NPO法人ARCSHIP」

「人」と「街」と「音楽」がもっとつながるための活動紹介をはじめ、神奈川県内の音楽・アートイベント情報をナビゲートします。

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【私的音楽評】NO,133 ニシセレクト37 クロコダイル・ロック

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くだらない時間

「昨日の夜なあ、商店街の入口で立ち小便しとったら
 タバコ屋のババアがごっついライター持って追いかけてきおったんや。
 そやからワシの鉄砲見てみいとチンチン突きだしたら、
 ほんまにヒィ付けおった。ケェが燃えて鉄砲が真っ赤なミサイルやで」
チンピラのノリさんは、僕ら不良高校生を笑わすために
いつもサービス精神あふれる与太話しをしていた。

喫茶店ルフランの2階。ろくでもない人間のたまり場。

地元の不良高校生、博打好きの商店主、薬中からヤクザまで、
なにをするわけでもなく、グダグダと時間をすごしていた。
たまに、私服警察官が上がって来るのだが、
1階からマスターが「ナポリタンは売り切れやでぇ」の大声を合図に
高校生はタバコを、大人達は見られてはいけないものを、
すばやくポケットに入れるのだった。
私服警官も「ここのナポリタン人気あるなあ」と
いつも笑いながら帰っていった。

のどかな1975年。小さな街の風景。

ある日、我が校で2番目に喧嘩が強いケンゴ君が
「わしら三十になったら何しとるやろか」とつぶやいた。
するとヤクザのひとりが
「ネクタイして会社行って、嫁と子どもに飯食わしたれ」と。
私設輪券を売っている用品店の親父が鉛筆をなめながら
「マジメに堅く働け。それが一番」と言った。
高校生達は冗談か説教か分からない大人達の言葉を黙って聞いていた。
僕は店の片隅のジュークボックスに三十円を入れて
“クロコダイルロック”をかけた。
エンディングになるとチンピラのノリさんが寄ってきて
「エルトンジョン、ええな」とジュークボックスを蹴った。
針は元に戻り再びイントロが鳴りだした。

あの、くだらない時間は何も生み出さなかった。
ただその風景や表情や出来事は、なぜか記憶の真ん中にある。
くだらない時間を過ごしたいと、このごろ思う。
ただ、今の僕は、今の日本人は忙しすぎる。そんな気がする。

ジュークボックスを蹴飛ばすと、レコード針が戻る。
なんとまあ呆れるほどくだらなくて忘れられないよ。

クロコダイル・ロック(1972年)/エルトン・ジョン
http://www.youtube.com/watch?v=DoOU62jFYv0&featurehttp://www.youtube.com/watch?v=DoOU62jFYv0&feature
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