2010.10.28 Thu
【私的音楽評】NO,71 恵美セレクト1 担当:めぐみ

なんだかよくわからないけど、無条件で好きになることって、ないですか?
私にとっての椎名林檎って、まさにそういう存在みたいで。
椎名林檎の音楽に出会ったのは「ここでキスして」がFMで流れていたのを聴いてから。
ちょっと聴こえて、どうしようもなく好きになりました。
PVで、赤いバラの木をバックにギターと歌う彼女の胸元にも衝撃を受けたけど
それよりも、心臓をグっと鷲づかみにされるような、搾り出されるような声に心を奪われて
この人の歌う歌を片っ端から探して一日中聴き続けたり歌詞を読んだり
世界観に近づこうと一生懸命になったりしたものです。
その時の自分の意識によって、聴く曲は変わるのですが、
特に今良く聴くのは「幸福論」「丸の内サディスティック」「同じ夜」「依存症」あたりです。
けど、なんでこんなに好きになったんだろ?と、あらためて思い返したときに
大友裕子の存在を思い出しました。
遡ること、約20年前。
私の母は、自宅から歩いて5分くらいのとこにあるお米屋さんで
パートタイマーとして働いていました。
1軒1軒のお店がくっついて並んだ、長屋みたいな造りの商店群は、
普通の住宅街の中にぽつりと置かれていました。
母のいるお米屋さんや、八百屋さん、造園、レトロな喫茶店などが軒を連ねて
その頃、局地的な活気を生み出していました。
この、長屋のような商店街に生きてた1人の音楽好きな兄ちゃんから
私は大きな大きな影響を受けることになります。
その昔1983年、葛城ユキの「ボヘミアン」という歌がヒットしていたのをご存知ですか?
葛城ユキは、スクールウォーズってラグビーのドラマ主題歌「HERO」を唄ってた人です。
(そそ。イソップ。懐かしい・・)
ボヘミアンという楽曲を提供したのはチャゲ&飛鳥の飛鳥涼。
そして、この曲を提供され初めて唄ったひとが、大友裕子なのです。
ハスキーで、魂をゆさぶられるような声で叫び歌う「傷心」を知ったのは高2の夏。
前出の兄ちゃんがレコードを沢山持っていて、
音楽の興味と影響を与えてくれるには充分な質と量と存在感でした。
井上陽水も、レッドツェッペリンもクィーンも、キャロルキングもこの時期に一気に自分に取り込まれました。
ただ、この兄ちゃんはビートルズは好きでなかったみたいで・・
私がビートルズに出会ったのは25歳を過ぎてからになります。
その在庫レコードの中で、ひときわ異彩を放った大友裕子の2枚のアルバム。
「傷」、そして「絆」という2枚。


曲名だけとりあえず並べてみるけど
独枕
手切れ金
傷心
死顔-エピローグ
赤い傷
愚か者
天罰
と、こんな雰囲気です。ヲイヲイ、ネガティブだよタイトル・・と軽くツッコミを入れたくなるなぁ。。
けど、「傷心」を聴いて胸をえぐられるような気持ちになったのは今でも忘れられない。
なんとなくだけど、この2枚のアルバムタイトルが「傷」と「絆」というのには
きっと想像もつかない大きな意味があって、
それって、壊れそうな心と心をつなぐためにきっと必要なプロセスなんだろうなぁと、
当時わかったようなわかってないような多感な私がそこにいました。
1978年、ポプコンや第9回世界歌謡祭を経て同年12月にデビューした大友裕子は
1982年9月21日、「ボヘミアン」を発売したその日に引退していたそうです。
結婚を機にということだったようですがなんとも潔い。
(普通、NEWシングル発売日に引退するなんて、ありえないことなんだと思うんです。)
さて、それから20年くらいして椎名林檎がデビュー後に放った2枚のアルバム。
「無罪モラトリアム(MM)」、そして「勝訴ストリップ(SS)」という二つの作品。


無罪と勝訴。傷と絆。
今更ながらに大友裕子がフラッシュバックしてしまう。
二人とも、心の中に海よりも深い闇を抱えているような独特の世界観だと感じます。
どこにもないような歌を歌う。中毒性がある。救われてしまう自分がいる。
二人とも、巻き舌を使う。
二人とも、シンガーソングライター。
二人とも、ジャジーでクラシカル。
二人とも、まっすぐ歌う。
きっと私の本質はこういうのが好きなんだろうな。
天罰
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| 週刊木曜日私的音楽評 | 10:00 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑
大友裕子さん…懐かしい名前です。
また、大友裕子さんと椎名林檎さんをリンクさせるセンスにも感嘆!
| | 2010/10/31 23:08 | URL |