2011.12.29 Thu
【私的音楽評】NO,125 ニシセレクト36 デイ・ドリーム・ビリーバー(夢想者)

忌野清志郎がタイマーズ時代に意訳でカバーをしている、
デイ・ドリーム・ビリバーという歌がある。
この歌、てっきり恋人にふられたアホな男の歌だと思っていた。
だってさ、
ずっと夢を見ていて安心していて、朝起きたら“彼女”がいなかった。
そんな歌詞なんだもん。
男はアホだからよくある話だが、それにしてもマヌケだ、と。
ところが、どうやら“母親”の歌のようなのだ。
先月、これを教えてくれたのは
親友であり長い付き合いのBarイグレックのマスターだった。
彼がポツリと言った。
「母が急死したあとに、たまたまこの歌を聴いたらね…」
“写真の彼女は微笑んでいる”も
“彼女はクイーン”も、歌詞すべてに合点がいくのだ。
そうだったのか……..。
えーっと。
いまこのテキストを九州の実家で書いています。
となりには認知症の母がいて、お菓子をほおばって俺を見て笑っています。
長くても2年から3年で、母の記憶から俺は消えるかもしれません。
でも今は元気に会話も出来ます。
ほっぺたを突っつけば、母の体温と笑顔が返ってきます。
写真ではないのです。生身の母がいます。
ごめんよ、お袋。俺は大バカものだ。ずっと安心していたんだもの。
ずっと元気だと思っていたんだもの。永遠な事などありゃしないのに。
もっと早く症状に気付いていればさ。
俺は自分の夢ばかり追っていて、なんて息子なんだろうか。
もう後悔はしたくないから、思い切り大切にするよ。
もちろん笑いながらね。自分の夢も追いながらね。
なんたって、お袋は俺の“クイーン”なんだから。
http://www.youtube.com/watch?v=wCZsjp1zXcw
デイ・ドリーム・ビリーバー/忌野清志郎(タイマーズ1989)withウルフルズ
| 週刊木曜日私的音楽評 | 08:57 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑