2011.04.28 Thu
【私的音楽評】No.95 和田セレクト2 担当:和田
今回のご指名にあたり、
もしかしたら、あまり馴染みがないかもしれないジャンルの
音楽を取り上げさせてもらいますね。
千原英喜(ちはら ひでき)
現代の日本の音楽界で、特に合唱の分野で
作品の評価、人気ともに高い作曲家。
日本の古典や宗教性をテーマに多くの作品を書いているけど
今回は私のお気に入り3曲を紹介します。
組曲「ある真夜中に」
2006年のNHK全国学校音楽コンクール用に創られた。
詞は瀬戸内寂聴さん。
これは、純粋なラブソング。
「わたしは ここに います
たとえ 永遠にたどりつけなくても」
ストレートなことばが、合唱という声の重なりと響きとともに
胸を打つ。
後に、寂聴さんからの提案で、4曲からなる組曲になったことで、
その世界は広がり、
愛の悩み、喜びと交錯する苦悩・・そして時空を越えた無償の愛へ。
「レクイエム」
1995年、阪神淡路大震災の追悼曲として作曲された「LAMENTO(悲歌・哀歌)」に、
都度書き加えられ、震災10年後に全曲が完成。
詞は、なんと古事記や柿本人麻呂!
さらにラテン語も織り交ぜられ、鎮魂と希望への祈りが迫ってきます。
「雨ニモマケズ」
ご存知、宮沢賢治の辞世の詩に曲をつけたもの。
私は賢治が大好きで、
東北を旅行したときのテーマは「賢治」で
ゆかりの地を訪ね歩いたほど。
賢治の作品は、多くの作曲家によって曲がつけられているけど
この「千原版・雨ニモマケズ」には驚かされた。
ともすると、厳しい自然と貧しい暮らしにも負けない・・という
悲壮を負ってしまうこの詩に
力強く、前向きで、希望と勇気の息吹を与えているのです。
まさに、パワーソング!!
ほとんどの人が、合唱という形式で歌を歌ったことがあるだろうけど、
合唱の演奏会には、あまり馴染みがないかもしれないですね。
異なる声の色の重なり、音と言葉の緊張、息遣いが
聴いている方にも伝染してきます。
そうした現象を引き起こすべく、計算された
見事な構成(ある意味ワナだね)を、ぜひ経験してみてください。
組曲「ある真夜中に」 はこちらから↓↓↓
http://www.youtube.com/watch?v=nfQrqCqSB0c
| 週刊木曜日私的音楽評 | 10:00 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑